湯浅慶朗の定理ーHand-Standing理論とは?
足指ドクターによる解説
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YOSHIRO YUASA
湯浅慶朗
理学療法士、足指博士、足指研究所所長、日本足趾筋機能療法学会理事長、ハルメク靴開発者。元医療法人社団一般病院理事・副院長・診療部長。専門は運動生理学と解剖学。足と靴の専門家でもあり、姿勢咬合治療の第一人者でもある。様々な整形疾患の方(7万人以上)を足指治療だけで治してきた実績を持つ。
ハンドスタンディング理論
2008年に湯浅慶朗が発見した「ハンドスタンディング理論」とは、人が立つ時の状態を、逆立ちに置き換えて考えることを言います。逆立ちするとき、手の形はどうしますか?手の指を大きく広げ、まっすぐ伸ばしているはずです。指を広げて伸ばし、地面をつかむことで上体のバランスが保てるのです。手の指が閉じていたり、曲がっていたら逆立ちはできません。手を「足」に置き換えると、手首は足首、ひじは膝、肩は股関節に当たります。足指がしっかり広がって伸びている状態であれば、最も無理のない体勢で、まっすぐにバランスよく立つことができます。
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どんなに土台がゆがんでいても、体は何とかバランスをとりながら立つことができます。しかし無理にバランスをとることで骨がゆがみ、筋肉が疲労します。それらの部位にかかる負担が外反母趾をはじめとする様々な痛みや体の不調を招くわけです。
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体の不調がある部分を正すのではなく、支える土台である足を安定させれば、おのずと改善する可能性が高まります。
足の機能も逆立ちの「手」と同じ
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指が広がっている状態であれば地面をしっかりとつかむことができるので、手の筋肉は逆立ちをしているだけでも鍛えられていきます。しかし指が曲がっている状態ではうまく地面をつかむことができないので、徐々に筋肉が落ちていきます。
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足も手の指と同じで、地面をつかむ動きをしながら歩きます。足の指が広がって伸びている状態では、地面をしっかりとつかむことができるので、足の筋肉は歩くだけでも鍛えられていきます。しかし指が曲がっている状態ではうまく地面をつかむことができないので、徐々に筋肉が落ちていきます。
靴の履き方が原因で足指が曲がる
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残念なことに、ほとんどの現代人は、間違った靴の選び方、履き方などによって足指が変形し、土台が崩れています。靴の中で足が前後に滑ることがほとんどですが、靴下やスリッパによっても足指が曲がることがあります。
筋肉が落ちるとアーチがなくなる
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足の骨はたくさんの筋肉で支えられてまっすぐな形をしていますが、ほとんどの筋肉が足指に付着しています。足指を使わず歩くと筋力が落ちていき、アーチのない開帳足という、べったりした足の形になっていきます。
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アーチがつぶれてしまうと、親指から小指につながっている筋肉が伸びてしまうため、筋肉が元の長さに戻ろうとして、親指と小指が内側に引っ張られてしまいます。
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親指と小指が内側に引っ張られてることで、くの字に曲がって外反母趾や内反小指になってしまうのです。
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足には3つのアーチがあります。それを支えているのは足裏の筋肉で、ほとんどが足指に付着しています。足指を使わずに歩くと、その筋肉が落ちてしまい、骨格を支えきれなくなって扁平足になります。
アーチが落ちると体重がかかとよりになる
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足指がしっかりと広がって伸びていれば、前方に50%・後方に50%の体重がかかる理想的なバランスになります。浮指やかがみ指になると、地面に接地する面積が少なくなり、かかとに体重が移動します。
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かかとに体重が移動すると、カラダは倒れそうになります。カラダが倒れないようにバランスを取ろうとして、どうにか立とうとします。それが猫背や反り腰の姿勢を招きます。
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無理にバランスをとって頑張りすぎると、骨盤はゆがみ、筋肉は疲労し、関節の負担が大きくなります。それが肩こり、腰痛、膝の痛みなどにつながってくるのです。
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足指がしっかり広がり、伸びていれば、もっとも無理のない体勢で立てるので、カラダに負担がなく、さまざまな「不調」から解放されるのです。健康なカラダを望むなら、足指を広げて、伸ばしましょう!