簡単なペーパーグリップテストで転倒のリスクを予測することができます

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転倒予測検査に使えるペーパーグリップテスト

スタッフォードシャー大学のCentre for Biomechanics and Rehabilitation Technologies :CBRT(バイオメカニクスおよびリハビリテーション技術センター) の研究者が検証した「ペーパーグリップテスト」では、紙を親指でつかむように言いながら、参加者の足の下から小さなカードを引っ張ります 。この試験は、糖尿病患者におけるより良い転倒リスク評価のために、病院で筋力低下を検査するために使用できる可能性があります。

CBRTの人間運動生体力学の准教授であるAoife Healy博士は、「ペーパーグリップテストは、足の筋力低下を検出するための簡単で臨床的に適用可能な検査である。本論文は、著者らの以前の研究を基にして、脆弱な患者のグループにおける足の強度とバランスの評価におけるその有用性を示す。」と述べた。この実験では、スタッフォードシャー大学のバイオメカニクス研究室に所属する20人の健常ボランティアと、インドの糖尿病クリニックに入院している糖尿病患者10人を対象としました。

外反母趾把持力は、足と足首の全ての筋肉群の強度およびバランスを維持する能力と強く関係することが以前から見出されています。修正試験に関するGait and Postureに発表された最新の結果は、臨床評価中の親指(Hallux)握力の信頼性と妥当性を示している。

この研究の共著者でインドのチェンナイの糖尿病足専門医であるDr.Lakshmi Sundarは、「このタイプの単純な臨床評価は、リソースが少ない状況では非常に有用であり、効果的な臨床アドバイスを提供するのに役立つ」と付け加えている。

この研究を率いたPanagiotis Chatzistergos博士、整形外科およびリハビリテーション生体力学の准教授は、「ペーパーグリップテストのオリジナル版は、足の筋力低下の検出に効果的であることが示されたが、その結果は操作者に依存する。この制限を克服するために、我々は、合格/不合格の結果を、カードを取り外すのに必要な引っ張り力の連続測定に置き換える、この強化されたテストを開発した。」と強調した。この最新の研究は、生命を脅かす足の潰瘍と切断を予防するための研究を含む糖尿病性足の管理の分野でのバイオメカニクスとリハビリテーション技術センターの幅広い研究の一部です。

バイオメカニクスとリハビリテーション技術センターのディレクターであるNachi Chockalingam教授は、「転倒と転倒の恐怖は高齢者の管理において大きな問題である。また、初めて転倒すると、その後に転倒への恐怖感が増し、活動性が低下し、筋力が低下するというサイクルが始まる。これはさらなる転倒のリスクを高める。落下する可能性のある個体を特定することが重要であり、最初の落下を防ぐことは極めて重要である。」と述べた。

ペーパーグリップテストのやり方

これは以前にもブログや書籍などで紹介しているもので、浮き指を判定するために考案した「ペーパーテスト」と同じやり方。論文として国立医学図書館にも掲載されていて、とても嬉しく思います。立った状態で行う方も多いですが、論文に掲載されている通り、いくつかポイントがあります。

・座った状態で膝を90度に曲げる
・かかとを浮かせないようにする
・体を前に傾けない(背もたれにかける)
・素足では行わない
テンションメーターに紐をつけて引っ張れば、どれくらの力に耐えることができるかを測定できますが、一般的には「コピー用紙」を親指の下に入れて、紙を親指で押さえてもらう程度で良いかと思います。
その紙を引っ張ってもらって、紙が破れるほど親指で押さえられていれば合格です。実際には90%くらいの方が紙を押さえることができないほど、親指の筋力は低下しています。かなり簡単なテストでありながら、転倒評価・足趾評価にも使えるので、多くの病院で採用してみて欲しいと思います。
転倒予防のために筋力を鍛える方が多いのですが、筋力がついてきてもよく転ぶという方は多いのではないでしょうか。実は、子供も大人も転倒の要因には筋力以外のものが深く関係していることがあります。こちらのブログも参考にされて下さい。
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【参考文献】
Panagiotis E. Chatzistergos et al, Reliability and validity of an enhanced paper grip test; a simple clinical test for assessing lower limb strength, Gait & Posture (2020). DOI: 10.1016/j.gaitpost.2020.07.011

湯浅慶朗(YUASA YOSHIRO)
足指研究所 所長
理学療法士、足指博士、足指研究所 所長。ハルメク靴の共同開発者。東京大学で研究を行う。

病院で理学療法士として高齢者医療(リハビリ)に携わる。現代医療のあり方に疑問をもち、病院を退職。妻のO脚改善をきっかけに足指の研究に入る。一生歩き続けられる体をつくる「ひろのば体操」を考案。西日本新聞連載「お茶の間学・足指伸びてますか~」(全22回)が人気となり、NHK「サキどり」「ガッテン」などで足育として取り上げられ、大きな反響を呼び、足指研究所で足腰の相談に乗るほか、病院の再建をはじめ、一般や学生、児童向けの講演活動を行っており、日本国内だけでなく、ニューヨークやバンコクなど、世界各地を飛び回っている。

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