肥満と変形性膝関節症は無関係!?体重を落とさず膝の変形を改善する方法
膝の痛みで病院に行くとレントゲンをとって変形性膝関節症と診断され、「肥満」や「加齢」のせいにされることが多いですね。これって本当でしょうか。
私もこれまでのべ6万人以上の患者様の治療を行ってきましたが、体重や年齢に関係なく改善して行く人を数多く見てきました。理学療法士として体重や歳のせいにするのは逃げでしかありませんし、患者さんに希望や勇気を与える身としては安易に言葉にするべきものではありません。
本当に体重や年齢のせいであれば、太ったアメリカ人には膝痛の人が多いはずですし、歳をとれば全員が膝痛に悩まされることになります。しかし現実は若い人でも痩せている人でも変形性膝関節症と診断されることもある。比較対照実験をすればすぐに分かるようなことを、ただの世間の情報を鵜呑みにして医療行為を行っている理学療法士や整形外科医の話を聞くと、本当に医学を追求しているのだろうかと疑問に思います。
13年前から肥満と膝の変形は無関係だと言われている
肥満は変形性膝関節症(OA)の強力な危険な要素のことであると言われていますが、変形性膝関節症発症後の進行リスクとしての影響は少ないことが示されています。アメリカのボストン大学医療センターのJingbo Niu氏らが行ったMOST(Multicenter Osteoarthritis Study)試験により明らかになったもので、米国リウマチ学会でも報告されています。Niu氏らは、変形性膝関節症(OA)またはそのリスクが高い患者3026例(50~79歳)を登録し、2007年6月までに30カ月の追跡期間を満たした2307例(平均62.4歳)の解析を行いました。
平均BMIは30.5だった。統計的にもっとも病気にかかりにくいBMI指数22を標準体重として、25以上の場合を肥満、18.5未満を低体重としています。それを考えればかなり太っている人たちを対象に調査をしたことになります。合計4481膝についてX線検査による膝の変形度評価をした結果、試験開始時点でOA(K/Lグレード≧2)が認められたのは35%だった。理学療法ガイドラインによるとK-L分類の評価は推奨グレードAとされており、変形性膝関節症のグレードとして多くの文献で用いられていると思います。グレードは5段階であり0~4で評価されます。つまり、調査対象者はほとんどがかなりの肥満であるにもかかわらず、膝の変形がないと判断された人たちが65%で非常に多かったということになります。
K-L分類のグレード
グレード0:正常
グレード1:関節裂隙狭小化なしでの軽度の骨棘出現または軟骨下骨硬化
グレード2:関節裂隙狭小化(25%以下)あるも骨変化なし
グレード3:関節裂隙狭小化(50~75%)と骨棘形成、骨硬化像あり
グレード4:関節裂隙狭小化(75%以上)で骨変化が著明
これらのうち、30カ月の追跡期間中にOAの進行が認められたのは52.6%で、その内訳は、内反膝の進行が41.1%、外反膝の進行が12.4%だった。一方、開始時にOAの認められなかった膝では、6.0%が追跡期間中にOAを発症した。膝の変形があれば何も対策をしなければそのまま進行するのは当然であり、変形した原因を解決しない限り良くなることはないことは誰にでも分かると思います。しかし膝の変形がない方は65%のうち6%の人しか進行していないので、かなり少ないことがわかります。
BMI別に4段階の肥満度(正常体重群、過体重群、軽度肥満群、高度肥満群)に層別化して、肥満度とOA発症リスクとの関係を検討した結果、正常体重群に対する各群のOA発症の相対リスクは、過体重群が2.0、軽度肥満群が2.9、高度肥満群が4.7と、肥満度が高いほどOA発症リスクが増大することが分かった。肥満に伴う発症リスクの増大は、内反膝、外反膝のいずれにも認められている。これに対してOAの進行に関する相対リスクは、過体重群1.0、軽度肥満群1.0、高度肥満群1.2と、肥満による影響はあまり大きくないことが示された。また肥満によるリスク増大がみられたのは内反膝のみで、その内反膝でさえも高度変形例では肥満が進行リスクの増大につながることはなかった。これはあくまでリスクであり、実際には太っていても膝の変形がない方が65%であることを考えれば、それほど日本人は気にしなくても良いかと思います。
では何が原因で膝の変形が起こっているのか。この研究論文でも明らかですが世界的に見ても原因は不明なのです。アメリカの理学療法は足や姿勢に対するアライメント評価が盛んで、日本に比べて20年くらいの差があると言えます。しかしそのアメリカでさえも足部のみの評価で終わっているため、踵骨(しょうこつ)が変形する原因がわからないままでストップしている状態です。
膝の変形の原因である「踵骨のゆがみ」は何が原因なのか
足元の土台である踵骨がゆがむと、それにつられて膝が曲がってバランスを取ろうとします。このバランス機構が働いた結果が「変形性膝関節症」です。つまり、土台を整えないまま膝の治療を行っても、再発を繰り返すか、ほとんど治療効果を得られないままとなります。ヒアルロン酸注射や痛み止め、人工関節や骨切などの手術が、いかに無意味であるか分かると思います。
かかとの骨というのは、26個の骨で作られている「足」の一部です。この26個の骨というのは、筋肉や靭帯で支えられているので、筋力が低下すれば骨を支えられなくなるのは当然です。つまり本質的な治療というのは、足元の筋力を鍛える以外にないと言えるのです。足の筋力を鍛えるのは手の筋力を鍛えるのと同じで、指をひらいて伸ばした状態から握れば良いだけです。つまり足の場合であれば、足指を使って地面をしっかりと踏み返せば、筋力を取り戻すことができるのです。
そのための条件が足指が「ひらいて伸びている」ことにあるのです。ですから「YOSHIRO SOCKS」や「ひろのば体操」で足指がしっかりとひらいて伸びて行くことを目標にしていけば、自然と変形していた膝も改善して行くことになります。その証拠に、下の写真のようにO脚で変形した膝でも、まっすぐになり膝の痛みもなくなっていくのです。
このように重度の変形性膝関節症の方でも、足指の変形を改善させることで、膝の痛みや変形を変えることができます。
変形性膝関節症は逆立ち理論で簡単に説明できる
妻との出会いにより「足指」という盲点が、既存のリハビリの限界を突破させてくれました。カラダの土台は「足」と言われていますが、その足を支えているのはまぎれもなく「足指」です。足指はバランスを取るために必要不可欠であり、小指を骨折すると分かりますがバランスよく経ったり歩いたりすることができなくなります。まさに「逆立ち理論」で手の機能と同じだったのです。
患者様の「足元」を見ていなかったのです。海外であればなおさらですが、靴を脱ぐことも、靴下を脱ぐこともありません。日本でもリハビリの時に裸足になって行う人はほとんどいません。そこが盲点だったのです。上記の論文でも靴や靴下を脱いで足指へのアプローチを行えば驚くほどの結果になっていたはずです。今、理学療法士の真価が問われています。もっと追求して足・足指にたどり着き、理学療法士にしかできない結果の出るリハビリテーション分野を確立するべき時代だと思います。
◾️参考文献
1) Arthritis & Rheumatology (Hoboken, N.J.), 08 May 2017, 69(6):1194-1203
2) Isomaa B, Almgren P, Tuomi T, Forsen B, Lahti K, Nissen M, et al. Cardiovascular morbidity and mortality associated with the metabolic syndrome. Diabetes Care. 2001;24(4):683–9.
3) Reaven GM. Banting lecture 1988. Role of insulin resistance in human disease. Diabetes. 1988;37(12):1595–607.
4)Kaur J. A Comprehensive Review on Metabolic Syndrome. Cardiol Res Pract. 2014;2014:21.
5) Trevisan M, Liu J, Bahsas FB, Menotti A. Syndrome X and mortality: a population-based study. Risk Factor and Life Expectancy Research Group. Am J Epidemiol. 1998;148(10):958–66.
6)Sowers MR, Karvonen-Gutierrez CA. The evolving role of obesity in knee osteoarthritis. Curr Opin Rheumatol. 2010;22(5):533–7.